<コラム4>子どもの笑顔がはじける 和田明日香さんが作る栄養たっぷり「ミルクパスタ」
「育ち盛りの子どもに、栄養をしっかり取らせたい。でも手間がかかるメニューは……」
そんな食卓の悩みに、「牛乳、イイですよ!」と食育インストラクターの和田明日香さん。時短レシピやアレンジのヒント、さらに和田家の食育方針までたっぷり教えてくれました。
牛乳と鰹節……うま味いっぱいの香りに思わず
和田さんが提案するレシピは、鍋ひとつでできるミルクペンネ。
牛乳や鰹節などを入れた鍋を火にかけると、ふわりと広がるうま味いっぱいの香り……。子どもから「今日のご飯なに?」と声がかかりそうです。「牛乳のグルタミン酸と鰹節のイノシン酸、二つのうま味が合わさるから調味料が少なくて済みます。牛乳はコクがあるので、その分塩分が抑えられるのもいいですよね」
今回使う具材はトマトとツナですが、ベーコンやキノコをはじめ色々な食材と合わせられるそう。調理のコツは?と聞くと「何の心配もないですよ」と和田さん。「水分が飛び過ぎてパスタが硬いなと思ったら、水や牛乳を足して微調整できますし。強いて言うなら、鰹節が口の中に貼りつかないように封を切る前によく揉むぐらいですかね」
あっという間にできた一皿を口に。うま味とコク、まろやかな口当たりで、牛乳が密かに味を支えています。「牛乳と鰹節のベースは、色々と使えます。晩ごはんなどで何品かつくる場合にも、他のメニューとのバランスで頭を悩ませることもないですし」
牛乳は熱しても栄養素がほとんど失われず、豊富に含むカルシウムはもちろん、たんぱく質やビタミンB群など様々な栄養をきちんと取ることができます。
昨今はカルシウム不足の子どもが多いため、”学校給食のない休日は、おうちで牛乳を飲もう”という「土日ミルク」の呼びかけが広がっています。
「我が家はみんな牛乳が好きですし料理にもどんどん使うので、実はあまり気にしていませんでした。おいしいし、便利な万能調味料でもあるのでいろんなやり方で取り入れてみてほしいですね」(和田さん)
鍋ひとつミルクペンネ ミニトマト×ツナバージョン
〈材料〉2〜3人前
A
水 200ml
牛乳 360ml
ニンニク ※包丁の背でつぶす 1片
塩 小さじ1/2
ツナのオイル缶 ※缶汁をきる 1缶(70g)
鰹節 ※袋のままもんで細かくする 1パック(4〜5g)
ペンネ 140g
ミニトマト 1パック(約200g)
バター 10g
しょうゆ 大さじ1
小ネギ 1本
黒コショウ 適量
1.鍋にAを入れて火にかけ、沸いたらペンネを加えて袋の表示から2分手前まで茹でる。その間にミニトマトを半分に切り、小ネギを小口切りにする。
2.切ったミニトマト、バター、しょうゆを加え、混ぜて乳化させる。
3.器に盛りつけ、小ネギと黒コショウを散らす。
こんなに便利! 「いつものメニュー+牛乳」
そんな和田家の「ミルク活用術」は、思わず真似したくなるアイデアばかり。例えば、ドレッシング。牛乳にマヨネーズを入れて粉チーズと塩コショウで整えれば、シーザードレッシングに。油の量が減らせるのだそうです。
さらに、スープなどの汁ものに加えると味わいに広がりが。「例えば、お味噌汁だとまろやかになって麦みそを使ったような甘味が出ます。これ、牛乳の割合を高めていくと和風ビシソワーズのようになりますよ」
また、魚や肉をつける臭み取りは頻度の高い使いかただそうです。「牛乳やヨーグルトにつけて臭みを取ると、食材本来のうま味が生きる調理方法で食べてもらえるので、いいなと思っています。育ち盛りの子どもには魚や肉などのたんぱく質を取らせたいですしね」
自発性と気づき…親子料理と食育のコツ
和田家の3人のお子さんは現在、12歳、10歳、8歳。大人と子どもで、味つけをわけているのでしょうか。「私はなるべく同じものを食べさせたい派ですね。単純に手間になるというのもありますし、別々のものを食べるのって何だかちょっと寂しい感じがするので。幼児食の頃は最後の味つけだけは別にしていましたが、今はもう全員に大人と同じ味と食材でトライさせています。なので、時には子どもが喜びそうにないものを出すこともありますよ(笑)」
そのひとつが山菜の天ぷら。「苦い!と言われました。でも『そっか、まだこのおいしさはわからないね』とマウントを取ってみたりして(笑)。大人になってから好きになるものがあっていいし、何がおいしいのかさっぱりわからないと思いながら食べるものもあっていいなと。我が家ではそうやって食の興味を広げてきました。なるべく色々な食材を使うことで、自然と栄養バランスも取れると思います。この方針でやってきたので、子どもたちは年齢の割にちょっと好みが渋いかもしれません。ミョウガとか大好きですね」
たくさんの食材や味を経験させるのは、3人が大人になった時、口にするものを自分で考えて選んだり、自分に何が必要なのかを想像したりする力を身につけてほしいという願いから。「まさに、子どもたちは牛乳を使って色々作っています。そのままゴクゴク飲む日もありますが、イチゴをスプーンでつぶして牛乳をかけるとか、マグカップに入れた牛乳をチンしてスティックの抹茶粉末を溶かすとか。バナナと牛乳と氷をミキサーにかけて、シェイクをつくることもありますね。おやつを食べ過ぎたら怒られるけれど牛乳だったら大丈夫だろうと考えているのかもしれません(笑)」
焦げたハンバーグ……始まった検証
和田家の食育は、そんな自発性と気づきを大切にしているのだそうです。時には口を出さずに失敗させてみることも大事。和田さんは子どもたちだけのハンバーグづくりを見守った時、3人の成長を感じたと言います。「レシピをインターネットで検索して食べたいものを決める、そこから全部子どもたちで挑戦しました。第1陣を焼くところまでは順調だったのに、ひっくり返すのに苦戦して焦げてしまったんですよね」
レシピ通りに進めたのに、思わぬ失敗。そばで見つめていた和田さんは、焦げることを承知で黙っていたのだとか。「落ち込んでいましたね。でも3人で手順を検証して、仮説を立て始めました。そして、コンロの火が近くて熱い熱いと手こずったので、次はひっくり返す前に火から外せばいいんだと対応策を導き出して。第2陣は大成功でしたよ」。
料理は子どもの成長のきっかけになり、親子の時間を楽しむチャンスでもあります。まずは、見守る大人も心に余裕が持てる休日に取り入れてみたいものです。和田さんのおすすめはお子さんも挑戦したハンバーグやピザ。
「自分で成形できるものが楽しいと思いますね。その子なりの形で表現できて、達成感があるので。ピザ生地は市販のもので構わないので、トッピングをいっぱい用意して好きな具材をのせてみるとか。保護者向けのセミナーなどではよく、食育について難しく考えなくていいですよと伝えます。見守ったり、一緒に楽しんだり。大人が子どもの隣で一緒においしく食べることが何より大事ですから」
たくさんの楽しい食事や料理の記憶はやがて、口にするものへの関心につながっていきます。食育というとつい、仕入れた情報を子どもにそのままパスしたくなるものですが、そんな時こそひと工夫を。「私はなるべく食卓の自然な会話の中で、効果的に伝えたいと思っています。不足している栄養素や目安量を説くより、『身長測定で今回はあんまり伸びていなかった』としょんぼりしている時、『牛乳が足りなかったんじゃない?』ぐらいのシンプルさで。そのほうが、自分の意思で手に取るようになりますよね」
笑顔と会話にあふれた楽しい食事を基本として、週末に親子で一緒につくれるレシピを考えたり、子どもが自分で挑戦できる飲み物アレンジのちょっとしたヒントと機会を用意したり。気負わない食育から始めてみたいところ。
皆さんのお宅の冷蔵庫には今、牛乳が何本入っていますか。家族みんなで楽しむ食育の第一歩は、おいしく栄養たっぷりの頼れる味方をストックすることかもしれません。
和田明日香(わだ・あすか)
料理家・食育インストラクター。1987年生まれ。結婚を機に修業を重ね、食育インストラクターの資格を取得。現在はレシピ開発やイベント出演など精力的に活動する。3児の母。近著の『楽ありゃ苦もある地味ごはん。』が好評発売中。