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地域から全国に広げる“ちち”への思い 「父の日に牛乳(ちち)を贈ろう!」×「土日ミルク」

熊本のとある地域での取り組みとして始まり全国展開して30年近い歴史を持つ全国酪青女による父の日に牛乳ちちを贈ろうキャンペーン土日ミルクが連携。多様な活動を支える事務局の支援体制や今後のコラボへの期待などをお聞きしました。

【今回の土日ミルクを創るヒト】
全国酪農青年女性会議
中村 俊介なかむら しゅんすけさん/委員長
全国酪農業協同組合連合会
隈部 洋くまべ ひろしさん/代表理事会長
炬口 浩司たけのくち こうじさん/総務部 副部長
板倉 雅治いたくら まさじさん/総務部
上原 直子うえはら なおこさん/総務部


【記事のポイント】
・地域のニーズや思いに根ざした多様な取り組み
・ツール提供成果共有で草の根的な活動もサポート
・消費拡大理解醸成活動は“規模より回数”がカギ
・“活性化”と“発信力アップ”につながるコラボへ

【活用した土日ミルクコンテンツ】
・土日ミルク イベント活用ツール

多様な人々がつくる地域に根ざした活動

全国酪農青年女性会議酪青女では毎年6月の父の日に合わせて父の日に牛乳ちちを贈ろう!キャンペーンと題した牛乳の消費拡大や酪農への理解促進を目的とする活動を全国各地で実施しています。

全酪連総務部の炬口浩司さん中央板倉雅治さん上原直子さん。

毎年5月中旬から7月にかけてその傘下の各地の酪農組合の青年部・女性部を中心として全国各地で140~150件ほどの活動が展開されます。農政局や県庁・市庁での牛乳贈呈式や駅前や道の駅でのPRイベント地元の幼稚園・保育園の訪問など内容は地域によりさまざまです。全国に6ブロックある酪青女の地域会議県の支部会議各地の酪農業団体など運営主体も多岐にわたっており地域に根差した自発的な活動が特徴です。

活動の広がりを支えているのが全国酪農業協同組合連合会(全酪連)や全国の酪農組合の事務局メンバーの皆さんです。活動に必要なツール類ロゴの入ったのぼりノベルティグッズなどの制作・提供から成果の取りまとめと発信まで現場に直接関わるのではなくあくまで地域の自主的な活動を尊重しながら裏方としてお手伝いするのが私たちの役割です板倉さん

“地域では難しいこと”をカバーする支援体制

配布されるツール類にはミルメーク保護者の似顔絵を描くための専用画用紙などがありいずれも複数地域からの要望に基づき事務局が一括発注・分配しています。ミルメークキャンペーンのロゴと大切な人へのメッセージ書き込み欄を印刷したオリジナルパッケージを2万パック用意するとのこと。地域単位の小ロットでは制作が難しいこうしたグッズも全国規模の連携により活用可能となります。

各地での活動成果は酪青女の地域会議などを通じて事務局が集約。例年7月開催の酪青女全国発表大会でも報告されます。他地域の好事例が共有されることで各地の活動の質をさらに充実させることができます上原さん

補完し合える関係づくりで既存の活動を活性化

こうした地域密着型のキャンペーンと土日ミルクのコラボが今年度からスタート。行政への訪問や各種イベントなどでのぼりやチラシといった土日ミルクツールが活用されました。

炬口さんは今回のコラボについて私たち酪農乳業団体が有機的につながりお互いの活動を補完できる関係をつくることが大切と語ります。父乳キャンペーン地域のニーズや思いに寄り添って草の根的な取り組みもしっかりフォローする土日ミルクはメディア活用も含めて幅広くPRするなどお互いの持ち味や得意分野を活かすことで相乗効果によって活動を活性化させていきたいと話します。 

この“活性化”とは単に複数の活動を集約して規模を拡大することではなく活動の回数を維持しながら内容の充実を図ること。消費拡大や理解醸成など社会への継続的な情報発信が必要なテーマでは活動の規模よりも回数が大切と強調する板倉さんは県単位で細かく見るとイベントやグッズ配布などは年間を通じて数多く行われています。土日ミルクと連携し回数をこなすことで多くの目にふれる機会をつくること。こうした活動が酪農家さんに力を与えるものになればと今後の展開に期待を寄せています。

消費者との交流が酪農家のモチベーションに

らくのうマザーズ 阿蘇ミルク牧場。動物とのふれあいのほかグルメやスイーツも充実。休日は多くの家族連れでにぎわう。

熊本県では6月から7月にかけて父の日に牛乳ちちを贈ろう!キャンペーンに関連して10回以上の活動が行われました。7月6日に阿蘇ミルク牧場で開かれた酪農を楽しく学ぼうツアーにも多くの家族連れが参加し酪農クイズやバターづくり体験乳しぼり体験などを楽しんでいました。

クイズ大会では酪農や乳牛に関する10問にチャレンジ。正解者にはミルクをテーマにした絵本を贈呈。
バターづくり体験では生クリームの入った容器を振って水分を分離させるとバターのできあがり。手作りのおいしさに子どもたちも大満足。
酪農家の手ほどきを受けながら本物の乳牛で乳しぼりを体験。間近で見る牛の大きさや体の温かさに驚きの声を上げる子どもも・・・。
低温殺菌牛乳とビン牛乳の飲み比べコーナーでは殺菌方法や味の違いに関心を寄せ酪農家に質問する参加者の姿も見られた。

こうした現場で消費者から毎日飲んでいますおいしいですねと声をかけてもらうことは酪農家にとっても仕事の大きな励みになるものですと話すのは酪青女の中村俊介委員長です。この日は自ら子どもたちの手を取って乳しぼりのサポートにあたるなど酪農家仲間と共にイベント運営にも携わっていました。

2022年7月の就任以来何もわからず怖いもの知らずでやってきましたと笑う中村俊介・全国酪青女委員長。

SNSやメディアを活用し発信力の強化を

熊本県の生乳生産量は九州最大全国3位の規模を誇る一方酪農家の減少は顕著で他県と同様に後継者育成と持続可能な経営の確立が大きな課題となっています。持続可能な酪農経営のためには女性や若手層の活躍が不可欠。かれらの力を高めるため酪青女としても農家同士のつながりの場づくりを重視していますと中村さんは話します。

一方で消費拡大・理解醸成活動については牧場見学や乳牛とのふれあいが防疫対策の面で難しくなっていることから情報発信のあり方も含めて活動内容を見直す時期にきているのではと指摘。業界全体が連携を深めながらSNSやメディアも積極的に活用してより幅広く効率的に酪農の価値を発信していく必要があります。今回のコラボがそのきっかけになるといいですねと期待を込めます。

全国の酪友が心を一つにする活動として

全国酪農業協同組合連合会
代表理事会長 隈部 洋くまべ ひろしさん

コロナ禍直後に比べれば状況は少しずつ改善している。今後も前向きに進んでいきたいと語る隈部洋・全酪連会長。

1997年熊本県大津町の酪農女性部が父の日に合わせて町長や行政の方々へ牛乳を贈る活動を始めたのが父の日に牛乳ちちを贈ろう!キャンペーンの原点です。ちょうど私が県や九州の酪農・生乳販売団体に携わっていた時期だったので大津町の取り組みを行政を巻き込んだ消費拡大活動の好事例として会議などで取り上げ各地に紹介し他地域へと広めていきました。

2004年に酪青女の全国委員長を拝命した際地域会議単位ではなく全国のみんなで同じ目標を掲げ心を一つにして取り組める消費拡大活動が必要と考えこのキャンペーンを提案しました。その2年後から全国展開がスタートし各地の酪農家仲間 “酪友”たちが思いを共有し連帯する活動の一つとして現在まで続いています。

熊本県酪農業協同組合連合会はらくのうマザーズとして牛乳・乳製品の製造・販売も手掛けているので販売なくして生産なしという意識が酪農家たちに根付いています。その熊本から始まったキャンペーンが全国に広がることで販売への理解が他地域の酪農家にも浸透してきたのは大きな成果といえるでしょう。

日本にとって食料自給率の向上は喫緊の課題です。酪農は直接的な食料生産にとどまらず国土・農地の保全や食と命の大切さを伝える教育的役割も担い食料自給に貢献しています。こうした多面的価値を社会に発信しながら酪農家自身も経営改善を重ね楽しい酪農を実現していくことが次世代の担い手が育つ環境づくりにもつながると考えています。