<コラム3>子どもの成長期を逃さない! 保護者が知っておくべき「牛乳の価値」

食品の優等生牛乳。しかし今カルシウムの摂取状況は1970年代並み。この飽食の時代に一体なぜ──? 人生の土台となる理由から賢い摂取法まで中村仁美さんが栄養と子ども医療の専門家に迫ります


食品の優等生と呼ばれ栄養バランスに優れる牛乳は子どもの成長や健康を願う保護者の心強い味方。ではどんな栄養素を含み何が優れているのでしょうか。フリーアナウンサーで3児の母である中村仁美さんが小児科医の大関武彦先生栄養生理学が専門の上西一弘・女子栄養大学教授にあらためて知っておきたい牛乳の価値について尋ねました。


豊富なカルシウムと高い吸収率に注目


中村仁美さん以下中村我が家はみんな牛乳が大好きで冷蔵庫には常に1Lパックが3本入っています。カルシウムが多くて栄養豊富だということは知っていましたがカルシウムの吸収率が優れているそうですね

上西一弘さん以下上西過去に試験をしたところ牛乳の中のカルシウムは体内で吸収率が40%ほどであるのに対し小魚でおよそ33%小松菜やモロヘイヤなどの野菜はおよそ19%でした。牛乳にはカルシウムの吸収を良くする成分が入っています。牛乳のタンパク質のカゼインが消化管の中で分解される時にカルシウムの吸収を促進する物質ができますし大腸でのカルシウムの吸収を良くする乳糖なども含まれています


出典Jミルクのウェブサイトより

大関武彦さん以下大関タンパク質やカルシウムなどをうまく摂ることは子どもたちの健康と発育に欠かせません。これらをしっかり摂るうえで牛乳は大変有効な食品です

中村カルシウムを子どものうちに摂るべき理由はどんなところにあるのでしょう

大関カルシウムは骨に沈着することで骨を強くします。目を向けたいのは骨量です。子どもの頃から20代のピークへ向けて上昇しこれを過ぎると下降の一途をたどります。そのためカルシウムを蓄えて維持していく必要があるのです。牛乳などの乳製品はカルシウムを豊富に含みますしそれ以外にも成長に欠かせない多くの成分が含まれています。全身の成長に重要なカギになる食品と言えます

中村小学6年生になる長男が急に骨太になってきたというか大人の体に近づいてきた印象があります。今はこのピークに向けてどれだけ上げられるかということですね


出典大薗恵一骨粗鬆症予防に重要なカルシウム摂取『小児科診療』第71巻6号1006 診断と治療社2008年

上西大事な時期だと思います。小学校高学年から中学生そして高校生の時期は特に骨が大きくなって中身が詰まってきます。栄養をきちんと摂ったほうが良い時期です。そしてぜひ適度な運動も勧めてください。また長らく中学生と高校生を調査していて運動している生徒と牛乳を摂取している生徒は骨が強くなることがわかっています

中村なるほど。栄養と運動が大切でそして牛乳ですね。母親としてはいつも栄養をきちんと摂らせたいと思っているわけですが日本人のカルシウム摂取量が不足しているという話が気になっています。飽食の時代ですし昔の人よりも栄養が摂れている気がしますが実際のところカルシウムは足りていないのですか


中村仁美なかむら・ひとみさんフリーアナウンサー。1979年生まれ。2011年に人気お笑いコンビさまぁ~ずの大竹一樹さんと結婚3児の母に。現在はテレビをはじめイベント出演など幅広く活動。3人の男の子を育てている

上西カルシウムは600mgほどの摂取が推奨されてきましたが1945年に始まった国民健康・栄養調査厚生労働省平均がこの推奨量に達した年はありません。特に近年はカルシウム摂取量が下がっており平均で約500mgにとどまっています。本当は700mgほど摂ることが望ましく今は約200mg足りないという状態です。摂取量500mgというのは1970年代と同じくらいの量です

中村50年前と変わらないというのは驚きますね。ほかに懸念される栄養の傾向はあるでしょうか

大関栄養の問題で入院した患者に関する調査でたくさん摂れている栄養素と摂れていない栄養素のあることがわかっています。つまり栄養バランスが悪いのです。カルシウムや鉄は増えていないけれど摂取カロリーは高くて肥満になっているあるいは生活習慣病になりかかっているという具合です。栄養素の摂り方を理解し質的な栄養バランスを保たなくてはなりません

上西偏った栄養知識の影響も少なからずあるかもしれませんね。頻繁にスポーツジムに行くような健康への関心が高い人でも鶏の胸肉が良いと聞くとそればかりになってしまうというような。栄養に関しては間違っている情報が出回っていることもありますから正しい知識を身につけてほしいです

中村食べ物も情報もあふれている状況だけに自分がどう選択するかが重要だということですね。サプリメントなどの使い方も気をつけたほうが良いですか

上西適切に使えたら良いのですが一般の方がどの栄養素がどれくらい足りていないかを把握するのは難しいと思います。例えば牛乳なら完全食品ではないもののカルシウムもタンパク質もビタミンなどもいろいろ入っています。それが大事なのです。食品で栄養を摂取するほうが良いというのはそういう意味です

子育て家庭はみんなで牛乳習慣


上西一弘うえにし・かずひろさん女子栄養大学栄養学部教授。専門は栄養生理学。カルシウムの吸収をはじめ骨と健康に関連する研究を続けている。著書に『NHK出版 健やかな毎日のための栄養大全』NHK出版などがある

中村親としては子どもたちに毎日どのぐらいの牛乳を飲ませれば良いか気になります

上西小学校6年生ならば給食で飲む牛乳びん紙パック200mLを3本分ぐらいです。給食で1本あとは朝とおやつか夜に1本。そのうち1本をヨーグルトに代えるというのも良いですね。牛乳ばかりでなくても大丈夫です

中村それなら無理なくできる気がします。カルシウム吸収率のほかに牛乳の魅力はどういったところにあるでしょうか

上西最初に栄養豊富だとおっしゃっていただきましたがたくさんの成分が入っています。特に牛乳のタンパク質にはいろいろなアミノ酸が入っています。分岐鎖アミノ酸BCAAに分類されるロイシンは筋肉を合成するのでスポーツをしている子どもや大人が牛乳を飲むと筋トレの効果も上がります。睡眠にも良いですよ

中村寝る前に飲むホットミルクには意味があるということですね

上西ええ科学的な根拠があります。牛乳に含まれるトリプトファンというアミノ酸が良い睡眠を生み出すメラトニンという成分に変化します。また成長ホルモンの分泌を促進するアルギニンというアミノ酸なども含まれています

中村栄養が必要な時期といえば妊娠中のお母さんも同様かと思いますがやはり牛乳が必要ですか

大関妊娠中も産後も牛乳を摂取したほうが理想の栄養バランスに近づいていくように思います。妊娠中の栄養状態は生まれてくる子どもの一生に関わります。低出生体重児として小さく生まれた子はそれなりに負担と負荷が生じるためお母さんは栄養をしっかり摂ってください

上西女性は特に骨粗鬆症にならないためにもカルシウムが必要ですから率先して飲んでいただきたいと思います

中村そうでしたか。ただ牛乳はカロリーが高いと手に取りにくく感じる人もいるのではないかと想像します。実は私も妊娠中に体重を増やさないようにと気にしていました


大関武彦おおぜき・たけひこさん浜松医科大学名誉教授。東京大学医学部医学科卒。1990年文部省長期在外研究員。国内外の小児医療に携わり現在に至る。小児期のメタボリックシンドロームなどの研究で知られる

大関妊娠中というのはそれなりの体型の変化があるものなので極端に増えないように注意すれば良いでしょう

上西そもそも牛乳1杯程度を飲むだけで太ることに直結するような影響はないでしょう。もちろん牛乳だけに偏って飲み過ぎるのは良くありません

大関あとは妊娠中に限らず若い人には過度なダイエットをする人がいますのでその人たちの骨量が気がかりです。骨が弱くなりカルシウムを蓄える力もなくなってしまいますから留意していただきたいです

上西高校生の女子の調査をしたところ牛乳を飲む生徒は摂取しているエネルギーは多いものの体脂肪率を調べると低いという結果が出ました。日常生活に牛乳を取り入れている生徒のほうが体脂肪は低いのです。牛乳が肥満やメタボリックシンドロームに抑制的に働くというデータもたくさんあります

中村むしろ飲むべきなんですね。一方でアレルギーで飲めないという場合はいかがですか

大関まずは本当にアレルギーかどうかを慎重に判断していただきたいですね。と言うのも実は当てはまらない人が安易に牛乳や乳製品断ちをしていることもあるようです。しかし牛乳や乳製品に特徴的に含まれる栄養素が摂れないというマイナスの影響も小さくないため必要がある人だけ医師の指導やコントロール下で適切に実践するということを心がけてください

上西アレルギーの場合にカルシウムを何で摂るかというと骨ごと食べられる小魚をはじめ緑の葉野菜や大豆製品などです。お腹がゴロゴロするから苦手という人は冷たいまま飲まずに料理に使うとかいろいろ試していただくことが大事ですね。このほか血中コレステロールが高くて牛乳や乳製品をある程度控えるように言われている場合は低脂肪乳の利用がおすすめです

子どもにとって給食がない“土日”はより意識して取り入れて



中村子どもたちのカルシウム摂取について保護者は学校給食で牛乳を飲んでいるから十分だろうどこか安心しているところがあるかもしれません

上西8割ぐらいの子どもは給食のない日にカルシウム摂取量が不足してしまいます。給食は年間180日ほどですから半分ですね

中村そんなにですか。日々の目安量は伺いましたが土日などの休みの日にカルシウムを積極的に摂るにはどうすればよいでしょうか


出典亀ヶ谷昭子ら 栄養教諭食育研究会誌第4号2020,P.15-24より作成Jミルクのウェブサイトより

上西保護者が家の冷蔵庫に牛乳や乳製品を常に準備するかどうかにかかっていると思います。子どもたちは自分では買ってきませんから。家で牛乳を手に取る機会があればほとんどの子どもは飲んでくれるはずです

大関そう思います。同時に大人が自分は関係ないと考えずぜひ家族全員で牛乳を飲んでください。大人はカルシウム量をいかに保つかが重要です。子どもと同じ量を飲まないにしても親が飲めば小さい子どもも飲んでみようという気持ちになりやすい。家族が同じ方向を目指して理解したり励ましたりするというのが理想ですね

中村子育てそのもののアドバイスのような気持ちで聞いています。子どもにだけがんばれ!と言って親が好きなことをしていてはいけませんね。一緒になって家族で取り組むべきだと思いました。ちなみに我が家はホワイトソースやハンバーグのつなぎなど料理によく牛乳を使いますが火を入れることでカルシウムの摂取量や栄養素は変わりますか

上西特に変化はありません。どんどん使っていただくのが良いと思います。保護者にはこの機会に日本の子どもたちが全体的にカルシウム不足だと言うことを知っていただきたいと思います。まずは朝食に牛乳や乳製品が入っているものを出してあげるのが良いのではないでしょうか

中村牛乳の価値を再認識すると共にたくさんのヒントをいただくことができました。ありがとうございました。

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